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菅 裕明教授が、アントニオ・フェルトリネッリ国際化学賞を受賞

掲載日:2026年6月8日

菅 裕明教授が、イタリアのリンチェイ国立アカデミー(Accademia Nazionale dei Lincei)より、2026年アントニオ・フェルトリネッリ国際化学賞を受賞しました。
 
アントニオ・フェルトリネッリ国際賞は、イタリアにおける最高峰の科学・文化賞として知られ、科学および芸術分野において卓越した貢献を果たした人物に授与されます。授賞式はローマのリンチェイ国立アカデミーにて、イタリア共和国 Sergio Mattarella 大統領の臨席のもと盛大に執り行われます。この栄誉ある受賞は、菅教授の研究成果が国際的に極めて高く評価されていることを示すものです。
 
菅教授の業績が特に際立っているのは、その出発点が「現代のタンパク質依存型生命が誕生する以前、分子システムはいかに機能していたのか」という、生物学における最も根源的な問いへの挑戦であった点にあります。研究初期において菅教授は、RNA分子から構成されるリボザイムが、後にタンパク質酵素が担うことになる機能を果たしていた可能性に着目し、その仮説を探究しました。当時、この研究は純粋な基礎科学的関心に基づくものであり、実用化への明確な道筋は見えていませんでした。
 
しかし、この探究はやがて、菅教授の最も重要な発見の一つである「フレキシザイム」の創製へとつながりました。フレキシザイムは、人工的に創出されたリボザイムであり、tRNAに多様な非天然アミノ酸を導入する能力を持っています。この革新的技術により、本来天然アミノ酸に割り当てられていたコドンを、まったく異なる新しいアミノ酸へと再割り当てする「遺伝暗号リプログラミング」が可能となりました。
 
菅教授はさらに、この成果を他の技術と組み合わせることで、機能性マクロ環状ペプチド探索のための強力な基盤技術であるRaPIDシステムへと発展させ、ぺプチド創薬分野に新たな活力をもたらしました。
 
現在、菅教授の技術は世界中の学術機関および製薬企業で広く活用されており、非天然ペプチドを用いた創薬研究の発展に直接的に貢献しています。基礎科学における重要な発見だけでなく、それを実用的イノベーションへと発展させた点においても、菅教授の研究は学術的・技術的・産業的に極めて大きな影響を与えています。
 
菅教授の業績は、科学における真に革新的な進歩の多くが、短期的な実用目的ではなく、「自然とは何か」という根本的問いへの純粋な探究から生まれることを力強く示しています。その研究は、基礎研究を支援し続けることの重要性を象徴する卓越した実例といえるでしょう。
 
このたびの栄誉ある受賞に際し、菅教授に心よりお祝い申し上げるとともに、今後ますますのご活躍をお祈りいたします。
 
(文責:化学専攻 教授 CAMPBELL Robert Earl)

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